Crosstalk

株式会社クレアツォーネ
代表取締役 草野信明

×

株式会社中島重久堂
代表取締役 中島潤也

株式会社クレアツォーネ
代表取締役 草野信明

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株式会社中島重久堂
代表取締役 中島潤也

出会った瞬間、お互いの好奇心が刺激された

中島:日本の良い商品を海外で販売したい。社長に就任した時、まずそう思いました。大阪の中小機構へ相談に行きましたが、担当者は開口一番「まだ鉛筆削りを作っているんですか?」……怒りを覚えました(笑)。いわゆるB級品を安く供給したら売れる道はある、と。しかしそれは違うと思いました。2010年頃、中国の電子取引最大手の「アリババ」が日本でサービスを開始したので、自社商品を掲載しようと思いセミナーに参加しました。4、50人集まって「やります」と言ったのは僕だけ。サイトに掲載してから、問い合わせは来るものの思ったような手応えはなく……。1年ほど経過した頃、ジェトロさんのセミナーに参加しました。セミナー後、加藤さんというスタッフの方に「大阪で鉛筆削りを作っていて、海外に売りたい。一度見に来てもらえますか」と声をかけてみました。期待はしていなかったのですが、2週間後、本当に加藤さんが来てくれて。約1か月後、草野さんが来られました。わざわざ東京から来られてびっくりしました。

草野:僕が一緒にやっていたデザイン担当のアドバイザーに「ちょっと鉛筆削りはないなー」と言われて。僕は人が「ない」とか「だめだ」って言うと燃えてくる (笑)。日本でハンディの鉛筆削りを一貫生産、しかも専業で。これは現場を見なければと、すぐに伺いました。

中島:日本の良い商品を海外で販売したい。社長に就任した時、まずそう思いました。大阪の中小機構へ相談に行きましたが、担当者は開口一番「まだ鉛筆削りを作っているんですか?」……怒りを覚えました(笑)。いわゆるB級品を安く供給したら売れる道はある、と。しかしそれは違うと思いました。2010年頃、中国の電子取引最大手の「アリババ」が日本でサービスを開始したので、自社商品を掲載しようと思いセミナーに参加しました。4、50人集まって「やります」と言ったのは僕だけ。サイトに掲載してから、問い合わせは来るものの思ったような手応えはなく……。1年ほど経過した頃、ジェトロさんのセミナーに参加しました。セミナー後、加藤さんというスタッフの方に「大阪で鉛筆削りを作っていて、海外に売りたい。一度見に来てもらえますか」と声をかけてみました。期待はしていなかったのですが、2週間後、本当に加藤さんが来てくれて。約1か月後、草野さんが来られました。わざわざ東京から来られてびっくりしました。

草野:僕が一緒にやっていたデザイン担当のアドバイザーに「ちょっと鉛筆削りはないなー」と言われて。僕は人が「ない」とか「だめだ」って言うと燃えてくる (笑)。日本でハンディの鉛筆削りを一貫生産、しかも専業で。これは現場を見なければと、すぐに伺いました。

NJK|中島重久堂

中島:草野さんの第一印象は「シュッとした東京的な人」。今みたいに長髪ではなかったけど(笑)。
草野:中島さんは「芯がしっかりした方」という印象。そして、現場環境と中島さんの熱量も見事に一致していました。中島さんは芯が通っていてパッションがあるから、リーズナブルな価格帯でもここまで品質を追求できる。最初に削りの穴を見て思ったのは「おお!美しい!」。刃物がピカッと光って、すごく美しかった。

中島:鉛筆削りの穴を見て「美しい」……そんな事僕たちは考えませんよ(笑)。しかも、草野さんは工場を見られてこう言われました。「作りこみはされていますけど、伝えこみはされていますか」。「作りこみ」と言うのは、我々製造業にとってはコアな部分。でも「伝えこみ」していますか、と。「バーン」と雷を打たれたように、胸に響きました。
草野:「作る」と「伝える」のバランスをいかに取るか。これは非常に大切です。価値を作っても、伝えないと回っていかない。サイクルを作るためにも、「作る」と「伝える」の価値をいかに高めていくか。

中島:我々にとって「価値」=「品質」。でも、それプラス「それだけじゃないですよ」という新しい気付きを与えられました。とにかく「バーン!」でしたね。
草野:僕は思ったことはストレートに言う方なので(笑)。まず経営者の方の姿勢、マインドが大事だと思っています。中島さんは芯がしっかりしている。そして先代から脈々と受け継がれているノウハウがある。ただそれが形式化されていない。中島さんや従業員の方の中にあっても、それをいかに「見える化」するか。伝えていくために表面化する。それが自分の役割だと思いました。「中島さんと組んだら面白いんじゃないか!?」と、僕もアドレナリンが出て、ワクワクしていました。

中島:草野さんはワクワクでも、僕はワクワクじゃない(笑)。何しろ強烈な印象で。草野さんが何をされているかとか、実績とか一切知らないけれど、東京からシュッとした人が来られて、工場見て、鉛筆削りの穴を見て、ものすごい衝撃を与えるようなことをおっしゃった。尊敬というのも少し違う。なんていうか……。
草野:もっと対等ですよね。中島さんの素晴らしいところは、「そうですね」だけじゃなく、疑問に思ったら「なぜ」って。その返しがあるから、僕もまた投げ返せる。キャッチボールができる。初対面のときから気持ちいいなと感じました。

中島:草野さんとの会話の中で、「こんな考え方があるんや!」って衝撃を受けたので、自分も草野さんの見ている世界を知ってみたい、という気持ちが大きかったです。
草野:僕自身の好奇心も刺激されて、中島さんの好奇心も刺激されていた。だから僕ももっと「中島重久堂」というブランドを、削りの世界を知ってみたいと思いました。

中島:そこからがスタート。草野さんを通して、知りたい、吸収したい、教えて欲しい。尊敬というより「一緒におもろい事をしたい」と。今まで誰もしてないような。我々自身のアイテムを通じて、「小さくても関係ない、こういうことをやっているんだ」と、草野さんと一緒に、世の中に広めたいと思いました。
草野:初回の訪問時、刃物の検品をされている女性に、「指で刃先を撫でて切れないんですか?」と聞いたら、「しっかり研磨されていたら指は切れないし、指でなでると、まるでベルベットのようです」と言われたんです。この比喩は素晴らしいなと思いました。こういうノウハウがまだまだ社内にいっぱいあって、これをどこまで比喩として人に伝えようかと。

中島:草野さんと加藤さんが、ジェトロさんの本部に一生懸命伝えてくださったんですよね。それで、輸出……事業なんだったかな。
草野:「輸出有望案件発掘支援事業」ってとんでもない名前(笑)。当時の部長は、「そもそも鉛筆って使わなくなっているのに、鉛筆削りって輸出ありなの? 私はないと思うわ」って。そう言われるとまた燃える(笑)。「オンリーワンですよ。その価値をしっかり伝えていけば確実に国内も海外も広がっていくと思います。芯のしっかりした経営者の方ですし」って伝えて、じゃあ支援に向けて進みましょう、となりました。

2回目に来阪した草野氏から爆弾発言「一緒にパリに行きませんか」

NJK|中島重久堂

中島:草野さんが一生懸命訴えてくださったから、ようやくスタート地点に立てました。
草野:中島さんが素敵な削りを作っているからこそ、ここまで広がって来たんです。

中島:ありがとうございます。それで、2回目にお会いしたときに草野さんが爆弾発言を (笑)。
草野:そう(笑)。「パリに一緒にいきませんか」って。「メゾン・エ・オブジェ パリ」っていう、デザイン界においてのパリコレみたいな。そこにぜひ出展しませんかって。

中島:草野さんが一生懸命訴えてくださったから、ようやくスタート地点に立てました。
草野:中島さんが素敵な削りを作っているからこそ、ここまで広がって来たんです。

中島:ありがとうございます。それで、2回目にお会いしたときに草野さんが爆弾発言を (笑)。
草野:そう(笑)。「パリに一緒にいきませんか」って。「メゾン・エ・オブジェ パリ」っていう、デザイン界においてのパリコレみたいな。そこにぜひ出展しませんかって。

中島:「何を言うてはるねん、この人」と思いました(笑)。うちの嫁さんと2人で口ポカンと開けて。パリで、初めての展示会。しかもすごく難しい、審査の厳しい…。そもそも一回も展示会なんかしたことがないのに!って。
草野:でも、目は「やりたい」って言ってましたよね (笑)。中島さんも学生時代にアメリカに行かれていたし、海外志向ではあるから。

中島:もちろん「イエス」という気持ちはあったけれど、我々の商品がそこまで伝えこみをする仕方も知らないし、そういう場所で、果たして……? このクエスチョンがあまりに大きくて……。あの当時はフランスが好きではなかったし(笑)。そこからが大変でしたよね。草野さんと加藤さんが熱心にジェトロさんに話してくださって。
草野:「メゾン・エ・オブジェ パリ2013」の合同ブースにエントリーしたのですが、僕の中では確実に勝算アリ。負け戦はしない(笑)。モノがしっかりしているし、専業は強い。ユニークポイントがはっきりしている。差別化ができているからそこをフィーチャーして、展開していけば響く人には響く。マスではなくニッチでいい。展示では、わかりやすくするために色を使いました。あと、僕がプロダクトを扱うとき大事にしている、空間との調和。モノは仕舞うと使用頻度が減る。いかに卓上に出しておけるか。プロダクトとしてのフォルムの調和っていうのは十分に取れているから、今まで意識されていなかった空間との調和というのを入れました。あと、鉛筆削りが252個入ったキューブを作って。色とキューブで面白いことをやろうと。キューブはただ奇をてらっただけじゃなくて、NJKの製造の強みを表しています。成形の精度の高さ、刃物の研磨の精度の高さ、刃物のセッティングの精度の高さ。キューブを見ればわかるんです。

中島:鉛筆削りをアクリルの中に入れたらいいんじゃないですか、って草野さんが提案してくださって。
草野:「メゾン・エ・オブジェ パリ」には数千の企業が出る。鉛筆削り削りは小さいから、見つけやすくするために、どういうしかけが必要なのか、引き算をしながらどうやって……考えていたときに、NJKの工場の出荷場にヒントがありました。箱詰めの様子がすごく美しくて気持ちよかった。ただ紙箱だと奥行きが伝わらない。俯瞰して見る分にはいいんですけど、正面とかサイドから見るときはダメ。これをどうノイズなく、気持ちよく見せるか、と考えた時に透明感のあるアクリルだ、と。

中島:草野さんが削りの穴を見た時「美しい」とおっしゃったように、常に見てる視点が違う。我々はどうしても品質や見た目を重視して、今草野さんが言われたような空間に置いたときの見え方なんて考えません。伝え方かつ、編集能力の高さの違いですよね。ほかのやり方もあるかもしれませんが、「メゾン・エ・オブジェ パリ」においての我々のプロダクトのベストな伝え方を、2013年の合同ブースで導いて下さった。

草野:何度も申し上げますけど、商品の品質は素晴らしい。楽に削れる、美しく削れる、楽しく削れる、機能的な部分は十分にクリアしている。あとは使い手にいかに手に取ってもらい、使用頻度を高めてもらえるか。手に取ってもらうには、人気のある、目的を持って行くようなお店の目につく棚に並べて欲しい。そういうお店に行くような方々が多く集まる展示会が、ヨーロッパにおいては「メゾン・エ・オブジェ パリ」。しかも中島さんが出た「Jスタイル+」は、デザイン系のいいバイヤーがついている。そのバイヤーが引っ張ってくれるから、マッチングがしやすいという計算もしていて。その人たちは新しい、よりユニークなものを探しているから、どんなひねりがいいかと考えて、キューブだ、と。

草野:何度も申し上げますけど、商品の品質は素晴らしい。楽に削れる、美しく削れる、楽しく削れる、機能的な部分は十分にクリアしている。あとは使い手にいかに手に取ってもらい、使用頻度を高めてもらえるか。手に取ってもらうには、人気のある、目的を持って行くようなお店の目につく棚に並べて欲しい。そういうお店に行くような方々が多く集まる展示会が、ヨーロッパにおいては「メゾン・エ・オブジェ パリ」。しかも中島さんが出た「Jスタイル+」は、デザイン系のいいバイヤーがついている。そのバイヤーが引っ張ってくれるから、マッチングがしやすいという計算もしていて。その人たちは新しい、よりユニークなものを探しているから、どんなひねりがいいかと考えて、キューブだ、と。

NJK|中島重久堂 |90周年

中島:結果は想像以上でした。草野さんが出したアイデアに対して応えて一緒に展示させてもらって、「こういう伝え方もありなんや! すごい!」と思いました。ジェトロさんの希望とマッチする会社ともトントン拍子に話が進んで。その後、すぐに次回も出るぞ、ということにはならなかったのですが……。

2015年の出展の目玉となるペンシルフレーク®

草野:中島さんは「メゾン・エ・オブジェ パリ」で新しい可能性を感じられたと思うのですが、日本に帰るとあまりに忙しくて、テンションが少しずつ薄れていったんですよね。そんな中でも、翌年も出ましょうという話になって。前回合同ブースで出ているし、今回は単独でも大丈夫だろう。でもいい場所を取るためにはしっかりした申請書を出さないと難しいですよ、と伝えました。忙しい中島さんにゴリゴリとは言えませんでしたけど(笑)。1回ダメでも結果的にはいいのかもしれないと思っていました。
中島:当時プレゼン資料の作り方も知らないし、カタログもない。わからないことだらけだったけど、草野さんは答えを言わない。これ、大事ですよね。答えを言われると「作業」になってしまう。考えないし。僕がワードで写真をはめこんだプレゼン資料を作って、安っぽい仕上がりでしたけど(笑)。草野さんに見せたら、「まあ、いけるんじゃないですか?」とかおっしゃって。そしたら残念なメールが……。ああ、そうなんや。落ちるんやって。

草野:中島さんは「メゾン・エ・オブジェ パリ」で新しい可能性を感じられたと思うのですが、日本に帰るとあまりに忙しくて、テンションが少しずつ薄れていったんですよね。そんな中でも、翌年も出ましょうという話になって。前回合同ブースで出ているし、今回は単独でも大丈夫だろう。でもいい場所を取るためにはしっかりした申請書を出さないと難しいですよ、と伝えました。忙しい中島さんにゴリゴリとは言えませんでしたけど(笑)。1回ダメでも結果的にはいいのかもしれないと思っていました。
中島:当時プレゼン資料の作り方も知らないし、カタログもない。わからないことだらけだったけど、草野さんは答えを言わない。これ、大事ですよね。答えを言われると「作業」になってしまう。考えないし。僕がワードで写真をはめこんだプレゼン資料を作って、安っぽい仕上がりでしたけど(笑)。草野さんに見せたら、「まあ、いけるんじゃないですか?」とかおっしゃって。そしたら残念なメールが……。ああ、そうなんや。落ちるんやって。

NJK|中島重久堂

草野:落ちる可能性はほとんどないのですが、合同出展と単独出展って、違うから。でもそこで、中島さんにスイッチが入って。
中島:そのときは、ショックと言うより……ああ、落ちるんや……と。まあショックですね(笑)。

草野:合同出展でキューブを作ったときの中島さんはスピード感があって、やりたいという気持ちも強かった。でもその時、プレゼンに関してはまだクエスチョンでしたよね。必要性はわかっていても、そこに時間をかけるならもう少し商品の方に、と。当たり前ですけどね。
中島:「編集してどう見せるが重要」と分かったのが2014年の結果だと思います。「草野さん、落ちることわかっていましたよね?」って聞いたら「ああ、難しいかもしれないですよね」って。「なんで言ってくれなかったんだ!」って普通なら怒るところですけど(笑)。でも僕はいい意味で「そうか、違うんやな」と思いました。そこでまた学んで、好奇心を持って草野さんの持っているものを1つでも理解できるようになりたいと感じました。

草野:あの時に1回落ちて、1年空いたことは、今振り返るとすごく貴重でした。2013年の合同出展のとき、「ペンシルフレーク」とは当時まだ名付けてなかったですけど、そこそこ反応が良かった。クリエイター志向の方々が興味を示してくださって。そこで、2015年の単独出展では、キューブとペンシルフレークの2つをフィーチャーしましょうと。
中島:ペンシルフレークを入れるのはいいのですが、どう見せるかが課題でした。美しいだけじゃダメだから。

草野:そこでも、鉛筆削りの性能を表現できるわけです。精度の高い鉛筆削りで削るとこんなに長く、美しく削れる、削りやすいっていうのが、すごくわかりやすい。削れない鉛筆削りでフレークができるわけがない。それも、薄く透過性があって。「薄さ」っていうのがまた日本的。そういったものが表現できる。
中島:プレゼン資料を作る際に、草野さんが、まず削り「かす」じゃないと。名前を決めましょうとおっしゃって。名前を付けることでごみじゃなくなる。「もったいない」「ものを大事にしよう」っていうのを伝えていこうと。2014年から企画していたTSUNAGOにつながるのですが。

草野:本当に造形が美しいってことで、いくつか名前を考えて、「ペンシルフレーク」にしよう、と。商標登録も取って。
中島:その中で「もったいない」という精神をしっかりTSUNAGOと一緒に伝えていこうということで。

新たなフィールドへ -TSUNAGO®-

NJK|中島重久堂

草野:「もったいないの精神」。これはもうNJKの哲学だと思います。中島さんは最初、「精神」がつくと重たいんじゃないかって、おっしゃいましたが、フランスって、哲学が高校生の必須科目だったりするから、日本の中ではちょっと重たく感じるかもしれないけど、哲学っていうのをしっかり伝えたほうがいいということになって。「もったいないの精神」に決めたんですよね。TSUNAGOの話を聞いたときも、素晴らしいと思いました。
中島:2013年、「メゾン・エ・オブジェ パリ」の後、とある発明家の方から、1本の電話がかかってきました。「短くなった鉛筆を2本つなぎ合わせて最後まで使えるようにできる特許を持っている。これを使って、日本の“もったいない”という想いを伝えてくれませんか」。「儲かるから」ではなく、「“もったいない”を伝えて欲しい」と。ノーベル平和賞を受賞したケニアの環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが「MOTTAINAI」を広めていたけど、その方は「鉛筆削りでやらなあかん」と熱く語られました。その方は木で手作りしていたけど、テレビで観た日本で唯一の鉛筆削りの工場である中島重久堂にアイデアをカタチにすることを依頼されました。「販売しよう」、とは言わずに「広めて欲しい」と。なんかその熱量が伝わってきて。話を聞きに行ったんです。でも問題がたくさんあって、まず「どうやって量産型にするか」。2つめは「高額な金型に投資するお金があるのか」。3つめは「どうやって販売するか?」ということ。

草野:「もったいないの精神」。これはもうNJKの哲学だと思います。中島さんは最初、「精神」がつくと重たいんじゃないかって、おっしゃいましたが、フランスって、哲学が高校生の必須科目だったりするから、日本の中ではちょっと重たく感じるかもしれないけど、哲学っていうのをしっかり伝えたほうがいいということになって。「もったいないの精神」に決めたんですよね。TSUNAGOの話を聞いたときも、素晴らしいと思いました。
中島:2013年、「メゾン・エ・オブジェ パリ」の後、とある発明家の方から、1本の電話がかかってきました。「短くなった鉛筆を2本つなぎ合わせて最後まで使えるようにできる特許を持っている。これを使って、日本の“もったいない”という想いを伝えてくれませんか」。「儲かるから」ではなく、「“もったいない”を伝えて欲しい」と。ノーベル平和賞を受賞したケニアの環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが「MOTTAINAI」を広めていたけど、その方は「鉛筆削りでやらなあかん」と熱く語られました。その方は木で手作りしていたけど、テレビで観た日本で唯一の鉛筆削りの工場である中島重久堂にアイデアをカタチにすることを依頼されました。「販売しよう」、とは言わずに「広めて欲しい」と。なんかその熱量が伝わってきて。話を聞きに行ったんです。でも問題がたくさんあって、まず「どうやって量産型にするか」。2つめは「高額な金型に投資するお金があるのか」。3つめは「どうやって販売するか?」ということ。

そこで手始めに、金型制作のためにクラウドファンディングも活用しました。この世界初の鉛筆削りに、共鳴していただけるコアなファンの獲得と、ファンづくりをかねておりました。そこから日経新聞の記事になったり、東急ハンズさんは販売前から取り扱いたいと言ってくださったり。また「大阪製ブランド」に挑戦することにして、更に販売前から知名度を上げるプロモーションを始めておりました。大阪製ブランド申請の条件で「メゾン・エ・オブジェ パリ」の後、すぐ販売しないといけなくて。販売開始をしたらもう、パンク。注文メールが1日4~500件も。NHKに取り上げられたら、4000件に跳ね上がりました。うちの嫁さんが「もうやめて!」って悲鳴をあげる位。でもこんな不景気にそんな注文が入るなんて。死にものぐるいでやろう!と。泣く泣く受注を一旦ストップしたら、またいつ納品されるんですかと問い合わせが殺到して半年間大変でした。

草野:「もったいない」の哲学と、「ペンシルフレーク」は根っこが一緒です。その精巧な技術があるからこそペンシルフレークがあり、TSUNAGOが生まれた。つないだ鉛筆とペンシルフレークは違っても、根っこは一緒。
中島:ここでNJKブランドの礎ができたと思います。準備が整ったという感じですかね。

草野:「メゾン・エ・オブジェ パリ」に行ったとき、会場の人たちは「また来たのか!」という反応でした。「おまえら本当にまた鉛筆削りだけでパリに来たのか!」って(笑)。批判じゃなくて、みんな喜んでいる。そこにまた可能性を感じました。
中島:そうそう、「削りだけかい!」って(笑)。覚えているのは60代位の2人のマダムが「ジャパニーズはクレイジーよね。鉛筆削りだけでメゾンに出展するなんてほんとクレイジー!」ってフランス語で言っていたとか。
草野:そうそう (笑)。他の出展者も楽しみにしていたみたいですよ。

ミラノでインスピレーションが高まり、NJKブランドの礎が確立

草野:ブランディングは「いかに企業哲学を軸に経済的価値と社会的価値、つまり文化を作っていくか」。そこで、メゾンもやりながら「中島さん、一緒にミラノに行きませんか」と誘いました。僕は2019年まで20年間「ミラノデザインウイーク」に行っていて。世界のデザインイベントの最高峰だから、それぞれの空間、環境で、それぞれのブランドが持つ個性、哲学がしっかり表現されている。これは、言葉で言うより肌で感じてもらった方がいいなと思って。
中島:ミラノには2回行きましたが、草野さんはもう水を得た魚みたいにウキウキワクワクドキドキ (笑)。もう、すごいですよ、楽しそうで、歩き回る歩き回る。足が棒になりましたよ。

草野:ブランディングは「いかに企業哲学を軸に経済的価値と社会的価値、つまり文化を作っていくか」。そこで、メゾンもやりながら「中島さん、一緒にミラノに行きませんか」と誘いました。僕は2019年まで20年間「ミラノデザインウイーク」に行っていて。世界のデザインイベントの最高峰だから、それぞれの空間、環境で、それぞれのブランドが持つ個性、哲学がしっかり表現されている。これは、言葉で言うより肌で感じてもらった方がいいなと思って。
中島:ミラノには2回行きましたが、草野さんはもう水を得た魚みたいにウキウキワクワクドキドキ (笑)。もう、すごいですよ、楽しそうで、歩き回る歩き回る。足が棒になりましたよ。

NJK|中島重久堂

草野:道路も駐車場もショールームも運河も倉庫も、街中が会場。そこで、それぞれのブランドが個性を出す。まず入り口のパネルに自分たちの哲学が描いてあって、それが無ければコピーブランドかな。
中島:草野さんは何回も見ているから、濃厚な解説でしたよ。
草野:マニアックな解説でしょ(笑)。
中島:めちゃくちゃ面白かったです。日本で見たことのない展示の仕方ばかりで。

草野:本当に空間提案ですし文化創造。例えば家具のブランドでも、家具のプロダクトとしての作り込みはもちろんのこと、ブランドアイデンティティと整合性のとれたテーマ設定がされていて、会場のインテリアからランドスケープまで連動し、街並みとも見事に融合しているんです。
中島:よくよく考えると、日本の寺社仏閣も、実はそうなんですよね。

草野:そうなんです。で、ミラノで、よりブランディングの重要性とか、哲学とはとか、空間性、インテリア性、どんな街の、どんなショップで、どのように販売されて、そこで購入した人が、どんな街のどんな家の、どんな部屋の中で使うか、っていうのを話し合うことでお互いにイメージの共有ができるようになって。そうすると、提案もしやすくなる。
中島:ミラノに行ったことで草野さんのモノの見方がより理解できて、すごく勉強になりました。NJKのブランディングの方向性もすっと入ってきました。

草野:何を引き算したらいいのかってことですよね。ミラノに行く前の年に、「色を排除しましょう」と提案しました。「メゾン・エ・オブジェ パリ」の単独の1年目は、カラーの展開にしていたけれど、もっとこういう色はないのか。こういう色が欲しい、ということになる。でも色は本質じゃない。美しく削ることに、色は要素として必要ない。そこで色を排除して、透明、白、黒だけで展開しようと。
中島:ミラノに行ったとき、企業のインスタレーションをたくさん見ました。日本で見ないようなインスタレーションを見た時に、それ自体がブランドをわかりやすく伝えているんだなと。僕はそう感じたんです。

草野:インスタレーションアート。空間全体を作品とした提案ですね。中島さんにとってアートっていうものがミラノに行ったことでより身近に感じられるようになられて。その中で、鉛筆削りを文化創造にどう貢献するかという。
中島:ミラノまで行かなかったら、文化創造に貢献するという考えまで発展してなかったと思います。

文化創造に貢献する文房具 「文創具®」として始動

NJK|中島重久堂

草野:一緒にブランディングをしていく中で、NJKを語る属性を決めたいと思いました。文化創造に貢献する文房具、文化を創造する道具……で、「文創具」。音もいいし、英語に置き換えても、「カルチャ―クリエイション」。しっくりくる。今までやって来た事とも、整合性が取れる。ここが決まるのは早かったですね。2017年、ミラノから帰って来た頃です。
中島:そういう言葉を掲げることで体系的にまとめられて、ブレずにやるための一つの柱ができたと感じました。

草野:それ以前から、ターゲット層も明確にしようとしていて。クリエイターやクリエイティブ思考の方、教育熱心な方、コレクター。それだけじゃないけれど、中心となるターゲット層はそんな方々ですよね。
中島:普通ならターゲット層は広くするし、文房具のブランドならなおさら大衆向けにしたほうが売り上げも上がるし、会社としても良いですよね。でも我々のやってきたことはそうじゃない。かつ、人と同じような方向でやっても我々自身の良さは伝わりにくいと思ったので、ブランドアイデンティをしっかり提案してもらって。

草野:一緒にブランディングをしていく中で、NJKを語る属性を決めたいと思いました。文化創造に貢献する文房具、文化を創造する道具……で、「文創具」。音もいいし、英語に置き換えても、「カルチャ―クリエイション」。しっくりくる。今までやって来た事とも、整合性が取れる。ここが決まるのは早かったですね。2017年、ミラノから帰って来た頃です。
中島:そういう言葉を掲げることで体系的にまとめられて、ブレずにやるための一つの柱ができたと感じました。

草野:それ以前から、ターゲット層も明確にしようとしていて。クリエイターやクリエイティブ思考の方、教育熱心な方、コレクター。それだけじゃないけれど、中心となるターゲット層はそんな方々ですよね。
中島:普通ならターゲット層は広くするし、文房具のブランドならなおさら大衆向けにしたほうが売り上げも上がるし、会社としても良いですよね。でも我々のやってきたことはそうじゃない。かつ、人と同じような方向でやっても我々自身の良さは伝わりにくいと思ったので、ブランドアイデンティをしっかり提案してもらって。

草野:その哲学を明文化することによって、さらにいいお客さんとも出会えました。特にうれしかったのは、パリの老舗画材店「セヌリエ」さん、ピカソも足しげく通ったという画材店。その通りに面したウインドウに、彼らがNJKの削りで作ったペンシルフレークを飾ってくれたんですよね。その辺からペンシルフレークがSNSでも話題になって、ドイツの文具メーカーが自分たちで作っていたりして。いわゆるパクリ (笑)。でも、文化創造ってそうやって派生させていくことで、普遍化させて行くことが重要な役割だから。そこは貢献できていますよね。さらに、ミラノで100年以上の歴史ある老舗文具店「ボンビニ」さんが、TSUNAGOでワークショップをやってくださった。
中島:活版印刷で自分たちが描いているイラストを販売されていて、その中にTSUNAGOが入っていたんですよね!

草野:あと、有名な「MoMAデザインストア」だったり、ドイツの「ヴィトラ・デザイン・ミュージアム」。名の通ったところから、相手から声をかけてもらって。決して中島さんは自ら売込みの営業をかけないから。
中島:相手から買いたいと言わせるだけです(笑)。そんな有名なお店の人たちに訴求するようなプレゼンができていたなんてありがたいですね。なかなか買ってもらえるお店じゃないとジェトロさんからも聞いていたし。今までやってきたことは正しかったんだ、と思いました。爆売れしたわけじゃないけれど、NJKが「文創具ブランド」として伝わっているんだと感じました。

イベントで新たに感じた、ペンシルフレークアート®の可能性

中島:2017年、E-maのイベントに出展依頼をいただいたとき、草野さんが「フレークで絵を描きましょう」と提案してくださって。「また草野さん、面白いこと言うよね」って嫁さんと言いながらも準備して、うちの娘が見本を作って。いざスタートしたらすぐに小学校2、3年生位の女の子が来て「私これやりたい!」って言うんです。衝撃ですよ。誰も来なかったらどうしようとか言っていたのに(笑)。また草野さんすごいなって。
草野:ペンシルフレーク、中島さんはすんなり受け入れたわけじゃなくて。興味がなかったらやらない人だから(笑)。まずは毎日ペンシルフレークを撮影しインスタに投稿し続けて、フォロワーが1000人いったらこれだけ反響があるからという証明になる。そこで手応えを感じて、紙フェスでやりましょうと思われて。

中島:紙フェスでは、老若男女問わずペンシルフレークに興味を持ってくれて。びっくりしたのが、2歳位の女の子がやりに来て。自分は力のいる作業ができないから、お父さんにボンドを出させたり鉛筆を削らせたり。1時間半延々とやり続けていました。
草野:ペンシルフレークアートのいいところは、手法も、描くものも、自由。あなたが思う形のものを作り上げてくださいと。その中でもボンドを出して上からフレークを落とす技法とか、パウダーを付けてやる技法はありますが。

NJK|中島重久堂
NJK|中島重久堂

中島:2017年、E-maのイベントに出展依頼をいただいたとき、草野さんが「フレークで絵を描きましょう」と提案してくださって。「また草野さん、面白いこと言うよね」って嫁さんと言いながらも準備して、うちの娘が見本を作って。いざスタートしたらすぐに小学校2、3年生位の女の子が来て「私これやりたい!」って言うんです。衝撃ですよ。誰も来なかったらどうしようとか言っていたのに(笑)。また草野さんすごいなって。
草野:ペンシルフレーク、中島さんはすんなり受け入れたわけじゃなくて。興味がなかったらやらない人だから(笑)。まずは毎日ペンシルフレークを撮影しインスタに投稿し続けて、フォロワーが1000人いったらこれだけ反響があるからという証明になる。そこで手応えを感じて、紙フェスでやりましょうと思われて。

中島:紙フェスでは、老若男女問わずペンシルフレークに興味を持ってくれて。びっくりしたのが、2歳位の女の子がやりに来て。自分は力のいる作業ができないから、お父さんにボンドを出させたり鉛筆を削らせたり。1時間半延々とやり続けていました。
草野:ペンシルフレークアートのいいところは、手法も、描くものも、自由。あなたが思う形のものを作り上げてくださいと。その中でもボンドを出して上からフレークを落とす技法とか、パウダーを付けてやる技法はありますが。

中島:女の子がものすごい顔で夢中でやっているのを見たときに、「ああ、草野さん、すごいね……」と思いましたね。メゾンの時よりも思いましたよ。「草野さん、すごい」って。
草野:日本の教育では「きれいに描きなさい」とか、「空は青」、とか決めてしまいがち。僕も小学生のとき顔をオレンジで描いたら「顔は肌色よ」って怒られたし、中学校のとき手首に目を描いて「気持ち悪いから描き直しなさい」とか言われて(笑)。そうじゃなくて、みんなクリエイターだから、好きなように描けばいい。ペンシルフレークアートも「好きなようにやって」というのが良いんです。

NJK|中島重久堂

中島:女の子がものすごい顔で夢中でやっているのを見たときに、「ああ、草野さん、すごいね……」と思いましたね。メゾンの時よりも思いましたよ。「草野さん、すごい」って。
草野:日本の教育では「きれいに描きなさい」とか、「空は青」、とか決めてしまいがち。僕も小学生のとき顔をオレンジで描いたら「顔は肌色よ」って怒られたし、中学校のとき手首に目を描いて「気持ち悪いから描き直しなさい」とか言われて(笑)。そうじゃなくて、みんなクリエイターだから、好きなように描けばいい。ペンシルフレークアートも「好きなようにやって」というのが良いんです。

中島:最初はやってみてもいいかな、という程度だったけど、思った以上にすごい反響で。草野さんもあんなにたくさん人が来ると思ってなかったでしょ(笑)。
草野:そうですね (笑)。あと中島さんがそこまで思ってくださるにはもう少し時間がかかるかな~と思っていたんですけど、思ったより早く手ごたえをつかんで下さって。これはもう次は東京だと。2018年、2019年、渋谷と銀座ロフトのワークショップですよね。ロフトは2日間で100人以上が来られて、渋谷は6~7割が海外の方でしたね。

中島:草野さんが英語で呼び込みされて、2割くらいはそれで来られていますよね。僕もだんだんノッてきて(笑)。
草野:ロフトの売り場の方も最初「こんなので人集まるんですか」って。「こんなの」って(笑)。「こんなカスで」って(笑)。でも、いざふたを開けてみたら「こんなに人が来るんですね!」って驚かれていましたよね。

中島:けっこう話題になりましたよね。大変でしたけど楽しかったです。
草野:一番に、中島さんの姿勢があって。それを元にしたさまざまな事。メゾンも含めて。あとE-maやロフトのイベントにしても、さまざまな人と関係を構築できたからこそ継続的な売り場づくりになっていますし、その後のロフト銀座店も。

NJK|中島重久堂

中島:草野さんが英語で呼び込みされて、2割くらいはそれで来られていますよね。僕もだんだんノッてきて(笑)。
草野:ロフトの売り場の方も最初「こんなので人集まるんですか」って。「こんなの」って(笑)。「こんなカスで」って(笑)。でも、いざふたを開けてみたら「こんなに人が来るんですね!」って驚かれていましたよね。

中島:けっこう話題になりましたよね。大変でしたけど楽しかったです。
草野:一番に、中島さんの姿勢があって。それを元にしたさまざまな事。メゾンも含めて。あとE-maやロフトのイベントにしても、さまざまな人と関係を構築できたからこそ継続的な売り場づくりになっていますし、その後のロフト銀座店も。

中島:そう、2019年の春にロフト銀座店の売り場をリニューアルするということで、こだわった商品を一角に置くことになって。メゾンでやっていたような展示の仕方、空間提案、キューブですね。2019年の4~5月銀座店で展示販売させてもらいました。
草野:大手の文具メーカーは別として、空間提案をさせてくれるブランドは、文房具関係ではほぼないと思います。それができるのが「文創具ブランド」。
中島:ロフトのバイヤーさん自体も2回パリに来て下さって、空間を体感してくれている。この空間をリニューアルした時にやってもらえませんか、と言っていたんですよね。そういう出会いの場所がメゾンでした。

草野:その後、2020年にDESIGNARTに参加されましたね。
中島:DESIGNARTはまず文創具ブランドとして違うことをやろう、と。商売にはつながらないけれど、「鉛筆を削る」という美的体験を、コンテンポラリーアートとして、世の人に見せましょうと。コロナ禍でしたが、50人くらい来ていただきました。はたから見たら鉛筆の削りカスをアートっぽくしているだけ、と思われるだけかもしれない。でもそこに新しい気づきを、世の中に伝えたいと思って参加しました。すごくいい体験になりました。

「もったいないの精神」に、新しい気づきをプラスして誕生した8[eit]

NJK|中島重久堂

中島:TSUNAGOとペンシルフレークの「もったいないの精神」がNJKブランドの礎になっています。だから僕はTSUNAGOで「iF DESIGN AWARD」を取れなかったことがすごく悔しかった。取れると思っていた。でもTSUNAGOって機能的なものを全面に出しすぎていたんですよね。デザイン性の伝え方が弱かったのかなと思います。
草野:TSUNAGOはあまりにもコンセプトがしっかりしすぎていたっていうのもありますよね。8[eit]は、アクリルのケースで2枚刃。見たことのないシンプルなデザインで、「ミニマル」っていう日本の美しさを表現していますよね。ミニマルと同時に、ペンシルフレークの造形美を鑑賞しながら。

中島:TSUNAGOとペンシルフレークの「もったいないの精神」がNJKブランドの礎になっています。だから僕はTSUNAGOで「iF DESIGN AWARD」を取れなかったことがすごく悔しかった。取れると思っていた。でもTSUNAGOって機能的なものを全面に出しすぎていたんですよね。デザイン性の伝え方が弱かったのかなと思います。
草野:TSUNAGOはあまりにもコンセプトがしっかりしすぎていたっていうのもありますよね。8[eit]は、アクリルのケースで2枚刃。見たことのないシンプルなデザインで、「ミニマル」っていう日本の美しさを表現していますよね。ミニマルと同時に、ペンシルフレークの造形美を鑑賞しながら。

中島:それで、原価が予想以上になったんですけど、草野さん、1万円でいけますかねって。そしたら「ん-いきましょう」って(笑)。
草野:NJKブランドでどこまで価格を上げられるか、やってみようと思って(笑)。TSUNAGOのほうが8[eit]よりコンセプトがしっかりしていたのですが、8[eit]のほうが、写真やパッケージに力を入れていたんですよね。

中島:1月の後半に「iF DESIGN AWARD 2020」から「congratulations!」というメールが来て、草野さんにすぐ連絡しました。めちゃくちゃうれしかったです。「このすごいデザイン賞が取れたんや!」って。ずっとやってきたことが認められたことがうれしかった。「取ったったー!」って。これで自分もデザイナーやぁ!って、違うか(笑)。チームNJKで取れた賞ですから、さらにちゃんとしたものを出さなあかん。売れそう、ではなくてこういうコンセプトをカタチにしていかないとダメだと思いました。

2023年発表の新製品は、廃棄されるお米が原材料

中島:2023年の新商品が「211」。素材が2つ。本体はアルミとライスレジン。ライスレジンっていうのはお米でできた樹脂で、廃棄されるお米の有効活用です。やはり「もったいない」っていうのが我々のコンセプトだから。
草野:ライスレジンはSDGsだし、アルミもリサイクルですね。

中島:もったいないと再利用でSDGsに取り組んでいこうと。
草野:鉛筆削りを通して文化創造につなげる、というテーマはこれまでの製品から新製品づくりにおいても、一貫してブレていません。これは、「メゾン・エ・オブジェ パリ 2018」で一番難しい「now!」ゾーンに出展する前に、中島さんと一緒に決めたミッション(経営理念)です。

中島:2023年の新商品が「211」。素材が2つ。本体はアルミとライスレジン。ライスレジンっていうのはお米でできた樹脂で、廃棄されるお米の有効活用です。やはり「もったいない」っていうのが我々のコンセプトだから。
草野:ライスレジンはSDGsだし、アルミもリサイクルですね。

中島:もったいないと再利用でSDGsに取り組んでいこうと。
草野:鉛筆削りを通して文化創造につなげる、というテーマはこれまでの製品から新製品づくりにおいても、一貫してブレていません。これは、「メゾン・エ・オブジェ パリ 2018」で一番難しい「now!」ゾーンに出展する前に、中島さんと一緒に決めたミッション(経営理念)です。

NJK|中島重久堂

中島:毎月2人でやっている「ブランド会議」で、「ブランドアイデンティティ」を確立しないといけないということで決めました。このミッションはすべてに共通していますし、これからもブレることはありません。

NJK|中島重久堂